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​取材、インタビュー等の記事

身体は「締める」前にまず「緩めよ」〜ピラティス指導者もこぞって通うヤムナがもたらす効果とは? | Well-being Guide (zenplace.co.jp)

REPORT​ By zenplace / 2017年2月6日

 

ヤムナと呼ばれるニューヨーク発のボディワークをご存知だろうか。ヤムナとは、骨格や筋肉を本来あるべき場所に戻し、体内にスペースを取り戻すことで痛みやストレスなどあらゆる不調を取り除き、いつまでも健康な身体作りを目指すボディワークの総称だ。 特に、独自に開発されたボールを使って行うヤムナボディローリングは、深く呼吸をしながらボールに向かって体重をかけるだけの誰でもできる手軽なメソッドでありながら、驚くべき効果が得られるとして、ニューヨークのセレブやアスリートの間で話題を呼んでいる。 ヤムナの実践者の中には、ピラティスやフェルデンクライス、ジャイロ、ヨガといった他のボディワークのインストラクターたちも含まれているという。そうした身体の専門家たちがこぞって取り組むからには、ヤムナには他のメソッドにはない、しかしより良い身体を手にする上で本質的な要素が備わっているはずだ。 そこで今回は、ヤムナの創始者であるヤムナ・ゼイク女史から直接指導を受けた数少ない日本人であり、トッププラクティショナーとして日本と本場ニューヨークをまたにかけてさまざまなクライアントを指導する、今岡美雪さんに話を聞いた。 現代人の身体を緊張状態から解放するヤムナのワーク ―多くのセレブやアスリート、他のボディワークのインストラクターたちの間でヤムナの注目度が上がっていると聞きます。ヤムナとはどういったメソッドなのでしょうか? 重力や加齢に負けない、いつまでも動けるしなやかな身体(ボディ・サステイナビリティ)を作るための最新のボディワークです。特徴的なのは、直径15〜25センチの独自に開発された数種類のボールを使うこと。ボールを骨や筋膜、筋肉に直接当てて刺激することで、各関節に本来あるべきスペースを取り戻すとともに、硬くなった部分をほぐして広げ、身体に本来のアライメントを戻していきます。 人間は誰しも身体の使い方に癖があります。そのため、普段生活しているだけでも徐々に歪みやねじれが生じて、本来あるべき身体のスペースや筋肉の柔軟性が失われると、身体のエネルギーの通り道も失われてしまいます。また、現代はストレス社会ですから、さまざまな要因により、身体は過度の緊張状態を強いられています。 ヤムナのワークを行うことで、こうした緊張状態から身体を解放してあげることができます。失われていた関節の可動域を増し、身体のアライメントを整えて、私たちが持つ本来のエネルギーを戻してあげることができるのです。 ―どんな人に向いているメソッドと言えますか? ヤムナのワークはクライアントを選びません。自分で頑張らなくてもボールが助けてくれるので、筋力のないお年寄りや女性でも、またストレッチが苦手な男性でも、自分の力では及ばない部分まで広げ、伸ばすことができます。 そして、トップアスリートから身体に制限のある方まで、どんなバックグラウンドの方でも、その人に応じたやり方でできるというのも、ヤムナのいいところです。 例えば、妊婦さんやマットの上にうつ伏せになるのがしんどいという方でしたら、ワークによっては立ったまま壁を使ってやることができますし、病院に寝たきりで自分では動けないという方でも、身体とベッドの間にボールを入れることにより、組織の循環が高まり、身体の緊張が緩んで、呼吸も通りやすくなります。 現代人はオフィスで座ったまま仕事をしていたり、スマホやPCに向かってばかりいるので、身体が凝り固まって呼吸が入りづらくなり、肩こりを抱えている人も多いです。ヤムナはそうした方々にとっても、仕事の休憩時間にオフィスの椅子や壁を使って気軽にできますから、現代社会に非常にマッチしたメソッドと言えるでしょう。

トップアスリートの筋肉には弛緩と緊張の良いバランスがある

一方でおっしゃる通り、トップアスリートの中にもヤムナを実践されている方は多いです。日本で言えば、スピードスケート五輪代表選手や陸上やバスケットリーグの選手等。アメリカだと、NFLの選手やプロのバレエダンサーにもクライアントがいます。 ―プロアスリートの方がヤムナを実践する目的はどこにあるのでしょうか? 意外に思われるかもしれませんが、トップアスリートの筋肉というのは非常に柔軟性のあるものなんです。普段は弛緩していて、使うときだけグッと収縮して最大の強さを発揮する。逆に、普段から筋肉が硬くなったままだと、この弛緩と緊張のバランスが上手く働かず、筋肉の力が発揮しきれないために、トップクラスの成績を狙うのは難しくなります。 とはいえ、トップレベルの人であっても、アスリートは多くの場合、同じ動作を繰り返し行うことを強いられるので、身体の同じ箇所に衝撃がたまり、長く続けていくとどうしても緊張は蓄積してきます。また、アスリートには怪我もつきものです。例えば骨折するとその箇所を治すためにカルシウムが送られ、骨が太くなりますが、同時に重く硬くなり、まわりの組織が癒着して可動域が失われてしまうんです。 こうした歪みは日常生活ではわずかなものであるかもしれません。ですが、トップレベルではそのほんのわずかな歪みや身体の制限が、成績を大きく左右します。一例ですが、私のクライアントでゴルファーの方は、トレーニングを重ねるも成績がのび悩んでいた中、股関節の可動域を広げるヤムナのワークで動きの制限を取ってあげると、驚くほど一気に飛距離が延びたということがありました。 アスリートは自分の身体を一番いい状態に保つために、常にメンテナンスをしていく必要があります。多くのアスリートがヤムナを実践しているのはそのためです。 実は私自身も、かつてはニューヨークで活動していたダンサーでした。鍼治療やカイロプラクティックなどで身体のメンテナンスはしていたのですが、長く続けていくと、対症療法ではどうしても追いつかなくなってきます。もっといいメンテナンスの方法はないものかと探している中で出会ったのが、このヤムナというメソッドだったのです。

ヤムナとピラティス、似ている?似ていない?

―お話を伺っていて、ヤムナの考え方はピラティスと似ている部分が多いと感じました。今日のセッション(このインタビューはPilates World2016の今岡さんのセッション後に行った)でも、一部似たような動きがあったと感じたのですが? 私自身、さまざまなクライアントさんのニーズに応えるために、ピラティスやヨガを始めとする多くの他のメソッドについても学んでいます。ヤムナとピラティスは、確かに一見すると動きが似ているように見えるかもしれません。ですが、フォーカスを置くポイントや実際に身体の中で起きていることは大きく違います。 ピラティスでは動く時に筋肉を収縮させて動かし、どちらかといえば身体を「締める」ように使うことがありますよね?一方でヤムナの場合は、ボールを当てて、そこに身体の内側から呼吸を入れることで、身体を深い部分から「開く」のです。 見た目のよく似たボールも、その使い方は大きく違います。ピラティスでは姿勢やアライメントをキープするために膝の間にボールを挟むことがありますが、ヤムナでボールを使うのは、それに加えて、ボールの直接の刺激を使ってその部分の骨や筋肉をアクティブにし、そこに呼吸を入れてスペースを生み出すためです。 私の印象としては、もともと身体に歪みや制限があったり、身体の感覚が乏しい人にとって、(器具を使うケースを除けば)いきなりピラティスのさまざまな動きをするのは、難しい場合があると感じます。ヤムナはその点、ボールのサポートを受けられるので、動きのイメージができない人、身体をうまく操作できない人にも効果的なんです。 ―他のボディワークの専門家がヤムナをやる理由というのも、その辺りにヒントがありそうですね。 実際、私のクライアントさんの中にも、ピラティスでうまくできなかった動きが、ヤムナで身体を緩めて開いた後にやってみると、即座に驚くほどできるようになったという方がいらっしゃいました。 筋肉は収縮して固く締まっている方が強いと思いがちですが、決してそんなことはありません。想像してみてください。私たちも狭いロッカーの中で縮こまった状態で、100%力を発揮できるでしょうか?広い空間で解放された状態になって初めて、思う存分力を出せるはずです。 「本来これだけ動ける」という長さと幅がなければ、筋肉は100%動いてくれない。ヤムナは、こうした長さと幅を取り戻すためのワークなんです。 これは筋肉だけについてではなく、骨に関しても同様のことが言えます。骨と聞くとすごく硬いものをイメージされるかと思いますが、実際には骨も柔軟性に富んでいて、ねじれたり、デコボコしたりするんです。 骨が何かとぶつかっても折れないのは、その瞬間に柳のようにしなっているからです。それが年齢とともに硬くなっていくと、衝撃を逃がすことができずにポキンと折れてしまう。 ヤムナではボールを使って骨を直接刺激するので、循環や新陳代謝を促しながら、骨にしなやかさを戻して、強く整えていくことができるんです。 このように、筋肉だけでなく骨のクオリティを変えていける点が、ヤムナが他のワークと違う大きな特徴のひとつです。 骨を刺激することで、腱や筋肉にも刺激が伝達し、筋肉の緊張がほぐれてくれます。プラクティショナーの指導の下に適切にワークをすれば、骨を刺激しただけでも十分に動作や姿勢に変化があることを実感できるはずです。

ヤムナが考えるマインドとボディの関係とは?

  ―ここまで、身体を緩めることの重要性について聞いてきました。一方で、ヤムナではマインドとボディの関係をどう考えるのでしょうか? 身体と心はつながっています。心がハッピーなのに、身体だけが緊張しているということはありません。ストレスフルな電話が1本かかってくれば、その瞬間、身体がキュッとこわばることからも、それは実感できるでしょう。緊張を生む出来事が、その時の気持ちとセットになって身体に刻まれてしまうのです。だからヤムナで身体を緩めることは、同時にメンタルをリリースすることにもつながるのです。 ヤムナのマインドへの効果を更に説明すると、身体にボールが当たることで、その部分に何が起こっているかのシグナルが神経をつたって脳へと送られます。ボールを通じて、脳と身体がしっかりとつながり、身体の感覚を感じ取りながられワークを深めると、刻まれていた心の記憶とともに解放が起こり、心身ともに深いリリースへと導かれます。 ボールを介して身体全体がつながることで脳内物質の活性化が起こり、循環も促進されてマインドエネルギーもアップします。また、脊柱の神経根にボールでアプロ―チすることで、副交感神経が刺激され、大きなリラックス効果を実感できることでしょう。 ―身体から心へとアプローチするというのは、やはりピラティスの考え方と似ていますね。 ニューヨークでの私のクライアントに、ウォール街で働く一流の証券マンの方がいました。責任の大きな仕事をしていることがそのまま身体に表れていて、肩へのストレスが非常に大きい方で、仕事が休みの週末に、よく肩のワークを受けていました。 その人がある時から、平日にもかかわらずスタジオに顔を出すようになったんです。あれ?と思って「お仕事はどうされたんですか?」と尋ねてみたところ、「ヤムナのワークで肩が解放されたら、自分が人生で何を本当にやりたいのかにフォーカスできるようになった。やりたいのはこの仕事じゃないと気付けたので、スッパリやめてきました」と明るい表情でおっしゃいました。 世の中にはマインドに直接アプローチする方法もありますが、それだけでは上手くいかないケースもあります。そんな時、ヤムナのように身体から心へとアプローチする方法であれば、心に溜まった問題の原因を突き詰めて言葉にしなくても、身体の解放を通して手放し、自然な形で心も解放していくことができると感じます。

 

text by Atsuo Suzuki 

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